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父の口座から毎月20万円、母が生活費として引き出していたお金は贈与になる?

フォーカス 013▶ 家族間のお金の移動

[ 質問 ]

父が亡くなり、相続税の申告をすることになりました。 生前、父の口座から母が毎月20万円を引き出し、生活費として使っていました。この出金は、贈与として問題になるのでしょうか?

[ 回答 ]

毎月20万円ですと、1年間では240万円になります。そのため、「年間110万円を超えているから、贈与税がかかるのでは?」と心配になる方もいらっしゃるかもしれませんが、生活費で通常必要とされるものは贈与税がかからないとされています。

生活状況は各家庭で異なるため、毎月20万円を引き出していたという事実だけで、直ちに「父から母への贈与」と判断されるわけではありません。

ただし、生活費の残りを母の口座に入金していた場合や、あきらかに生活費を超えるお金を出金していた場合、父の相続税申告をする時には、「その20万円が何のために引き出され、実際にどのように使われたのか」を確認することが大切になってきます。

相続税の申告では、毎月20万円の出金を、金額だけをみて「贈与」と判断することはありません。父の口座から出金されたお金が、実際にどのように使われ、その後どこに残っているのかを確認していきます。

毎月20万円の出金。なぜ税理士はそこに目を向けるのか!?

相続税の申告では、父が亡くなった時点の預金残高だけを確認すればよいわけではありません。

必要に応じて、亡くなるまでの預金の入出金を確認し、父の財産がどのように動いていたのかを整理していきます。

税理士は、母が父の口座から毎月20万円を引き出していたことが分かると、「この20万円は、何に使われていましたか?」と確認することになります。

つまり、税理士が確認したいのは、「お母様が毎月20万円を引き出していた」という事実そのものではありません。

そのお金が誰のために、どのように使われたのか、そして最終的にどこに、いくら残っているのかという点を確認しているのです。

母からすれば、「父の年金が入る口座から、夫婦の生活費として使っていただけです」という話かもしれません。

実際、食費や光熱費、医療費、日用品など、夫婦の生活に必要な支払いに使っていたのであれば、生活費としての性質を確認することができます。

20万円の使い道を確認

一方で、生活費として毎月20万円を引き出していたものの、実際にはそのすべてを使わず、使わなかった分をお母様名義の預金口座に入れて、そのまま貯めていたということであれば、そのお金の性質や最終的な残高を含めて考える必要があります。

つまり、重要なのは「いくら出金していたか」ではなく、「そのお金が実際にどう使われていたのか」なのです。

 

毎月20万円のうち、使わなかったお金があったら?

例えば、母が父の口座から毎月20万円を引き出していたとします。

そのうち12万円を夫婦の生活費として使い、残りの8万円を母名義の預金口座に入れていたとしましょう。

毎月8万円ですから、1年間では96万円になります。そして、そのお金を何年も母名義の口座に貯めていたとします。

この場合、単純に「毎月20万円すべてを生活費として使っていた」とは言えません。

父の口座から出たお金の一部が、母名義の預金として残っているからです。

このような場合には、

● なぜ母名義の口座に入れていたのか

● 誰のお金として管理していたのか

● 実際には誰が使っていたのか

● いつからそのような管理をしていたのか

などを確認する必要があります。

貯めていたお金

このように「生活費として使うために引き出していた」という説明だけではなく、実際のお金の動きまで確認することが大切です。

 

ここからは、よくある疑問をQ&Aで見ていきます

 

Q.夫婦なら、お互いのお金を自由に使っても問題ないのでは?

A.日常生活では夫婦間でお金を融通することは珍しくありません。ただし、相続税申告では「誰の財産なのか」を整理する必要があります。

夫婦だからといって、税務上すべてのお金が一つになるわけではありません。

相続税申告では、亡くなった父がどのような財産を所有していたのかを確認します。

そのため、「夫婦のお金だから」という理由だけで、預金の名義や資金の流れを確認しなくてよい、ということにはなりません。

国税庁のホームページでも、贈与税がかからない財産の一つとして、扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産のうち、通常必要と認められるものが挙げられています。

ここでいう生活費とは、日常生活に必要な費用のことで、治療費や養育費なども含まれます。

ただし、贈与税がかからないのは、生活費や教育費として必要な都度、実際にその費用に充てるためのお金に限られます。

そのため、生活費や教育費という名目で受け取ったお金であっても、使わずに預金したり、株式や不動産の購入資金などに充てたりした場合には、その部分について贈与税がかかることがあります。

つまり、「生活費として受け取ったお金だから、すべて贈与税がかからない」というわけではなく、実際に何に使ったのか、その後どのように管理されているのかが重要になります。

詳しくは、国税庁「No.4405 贈与税がかからない場合」をご覧ください。

 

Q.父が亡くなる直前に、母が100万円を引き出していました。生活費なら大丈夫ですか?

A.何に使ったのかを確認する必要があります。

例えば、父の入院費や医療費など、実際に必要な支払いに使ったのであれば、生活費としての性質を確認することができます。

一方で、使途が分からないまま100万円の現金が残っている場合には、

「その100万円の出金のうち、父が亡くなった時点でどこにいくら残っていたのか?」

という問題が出てきます。

父の銀行口座からお金が引き出されてるからといって、そのお金が自動的に父の相続財産からなくなるわけではありません。

お金がどこへ移ったのかを丁寧に確認する必要があります。

Q.なぜ税理士は、何年も前の通帳まで確認するのですか?

A.亡くなった時点の預金残高だけでは、財産の実態が分からないことがあるからです。

例えば、父が亡くなる直前に大きな出金があったとしても、そのお金が何に使われたのかは、現在の残高だけを見ても分かりません。

また、過去の預金を確認することで、

● 家族への定期的な送金

● 大きな現金の引き出し

● 他の金融機関への資金移動

● 母名義など、相続人名義の口座への振込

● 不動産購入などの大きな支出

などが分かることがあります。

そのため、相続税申告では、「父が亡くなった日の残高」だけではなく、「そこに至るまでのお金の流れ」を見ることがあります。

 

「毎月20万円を引き出していた」ことを隠す必要はありません

母としては、「毎月20万円も引き出していたことが分かったら、問題になるのでは?」と不安になるかもしれません。

しかし、重要なのは、出金そのものを隠すことではありません。

むしろ、「父の年金が入る口座から、毎月20万円ほど引き出して、夫婦の生活費に使っていました」と、最初から伝えることが大切です。

そのうえで、

● 何に使っていたのか

● どのくらいの金額を生活費に使っていたのか

● 残ったお金はどうしていたのか

● 母名義の口座に移していたのか

● 現金で保管していたのか

などを整理していきます。

使途が明確であれば、その内容をもとに財産の整理を進めることができます。

贈与を心配するより先に確認したいこと

家族間のお金の移動について、「これは贈与ですか?」というご相談をいただくことがあります。

もちろん、贈与に該当するかどうかを検討することは重要です。

ただ、その前に確認したいのは、「そのお金は、そもそも何のために動いたのか?」ということです。

毎月20万円という数字だけでは分かりません。

年間240万円という数字だけでも分かりません。

「生活費」という言葉だけでも判断できません。

通帳の記録、実際の生活状況、お金の使途、その後の資金の残り方などを確認して、初めてそのお金の性質が見えてきます。

相続税申告では「お金の流れ」を確認します

父が元気だった頃、母が父の口座から毎月20万円を引き出して生活費に使うことは、夫婦の生活の中ではごく自然なことだったかもしれません。

しかし、父が亡くなり、相続税の申告をすることになったとき、その何気ないお金の動きが、父の財産を把握するための重要な手掛かりになることがあります。

だからといって、「毎月20万円だから贈与」というわけではありません。

反対に、「夫婦のお金だから、確認する必要はない」というわけでもありません。

大切なのは、誰のお金が、誰のために、どのように使われ、最終的にどこにいくら残っているのか。ということです。

相続税申告では、預金の残高だけを見るのではなく、そこに至るまでの「お金の流れ」を確認することがとても重要になります。

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相続は、一生のうちに何度も経験するものではありません。 そのため、「何から始めればよいのか分からない…」と感じるのは、自然なことです。
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