失踪した夫の相続税申告が必要です。申告と納税の期限はいつまで?
フォーカス 012▶ 失踪宣告
[ 質問 ]
行方不明だった夫の失踪宣告が認められましたが、法律上の死亡日はかなり前になっています。
裁判所からの書類には日付がいくつも書いてあるのですが、どれを基準にして相続税の申告と納税をすればいいのでしょうか?
[ 回答 ]
失踪宣告には、不在者の生死が7年間明らかでない場合に認められる「普通失踪」と、戦争や船舶の沈没、震災などの危難に遭遇した者の生死が危難が去った後、1年間明らかでない場合に認められる「特別失踪(危難失踪)」の2通りがあります。
※本記事では、「普通失踪」のケースを前提に解説いたします。
家庭裁判所に失踪宣告を申し立て、それが確定すると法律上は死亡したものとみなされて相続が開始します。
しかし、失踪宣告が関係する相続税申告では、一般的な相続税申告と比べて、実務上の取扱いが異る部分があります。
最大の特徴は、申告書の作成の時に基準として使う「財産を評価する日」と「相続税を申告・納税する期限」の2つの基準日がズレるという点です。
押さえておきたい「2つの日付」
失踪宣告による相続では、「失踪者の除籍が載っている戸籍」に記載されている2つの日付が重要になります。
例(普通失踪の場合)
・死亡とみなされる日:令和5年5月27日 ←生死不明になってから7年後
・失踪宣告の裁判確定日:令和6年6月25日 ←裁判所が死亡とみなすことを確定した日
一般的なご相続なら、亡くなった日=被相続人の死亡の日となり、その翌日から10か月以内が申告期限になりますが、失踪宣告の場合はこの2つの日付がそれぞれ別の役割を果たします。
Q&Aでわかりやすく。 失踪宣告を受けたときの相続税申告
Q1. 財産の評価はいつの時点の基準で行うのですか?
「死亡とみなされる日」の時点の評価額を使用します。
戸籍上、失踪宣告を申し立ててそれが確定すると「令和5年5月27日」に死亡したものとみなされます。そのため、相続財産はこの時点の価値で計算します。
・土地:令和5年分の路線価・倍率表を適用
・建物:令和5年時点の固定資産税評価額
・預貯金・有価証券等:令和5年5月27日時点の残高証明書を利用
※ 審判が確定した日の時点の評価ではない点に注意が必要です。
Q2. 死亡とみなされる日が令和5年5月27日なら、その翌日から10か月後の令和6年3月27日が申告・納税期限になるのでしょうか?
A. いいえ。令和7年4月25日が申告および納税の期限となります。
下図の「審判確定証明書」に記載されている審判確定日が「令和6年6月25日」ですので、その翌日(令和6年6月26日)からカウントして10か月後である「令和7年4月25日」が申告および納税の期限になります。
これが失踪宣告における正しい取扱いになります。
▼失踪宣告の審判が決定した書類
▼審判が確定したことを表す書類
失踪宣告の手続きには長い時間がかかるため、仮に「死亡とみなされる日」の翌日から10か月を計算すると、裁判が確定した時にはすでに申告期限が過ぎているということになってしまいます。
そのため相続税法では「死亡したことを知った日の翌日から10か月」を申告・納税期限としています。
Q3. 相続税申告では、どのような書類が必要になりますか?
A. 家庭裁判所で発行される「審判書の謄本」と「審判確定証明書」を提出して取得する「戸籍謄本」が必要です。

家庭裁判所から発行された「審判書の謄本」と「審判確定証明書」を市区町村役場へ提出することで、戸籍に失踪宣告による死亡の記載(除籍)がなされます。
特に「審判確定証明書」は、税務署に対して「いつ裁判が確定したか(申告期限のスタート地点)」を証明する非常に重要な書類となります。
一般的な相続と失踪宣告による相続の違いまとめ
【一般的な相続】
・相続開始日:被相続人が亡くなった日
・財産評価の基準:亡くなった日の時点
・申告・納税の期限:死亡を知った日の翌日から10か月
【失踪宣告による相続】
・相続開始日:死亡とみなされる日(※普通失踪は7年満了時)
・財産評価の基準:死亡とみなされる日
・申告・納税の期限:失踪宣告の裁判確定を知った日の翌日から10か月
おわりに
失踪宣告による相続税申告は、「財産評価の年」と「申告期限」の起算日が異なるという特殊な構造を持っています。
評価する年を間違えると税額の計算ミスにつながるリスクが発生してしまいます。必要書類に記載された日付をしっかり確認し、正しく手続きを進めることが大切です。
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相続は、一生のうちに何度も経験するものではありません。 そのため、「手続きが複雑で何から手を付ければいいかわからない・・・」と感じるのは、とても自然なことです。
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