父が亡くなり、自宅の土地と建物を相続することになりました。 財産の多くが不動産で、金融資産はわずかです。 相続人は子ども2人ですが、どのように分ければいいですか?
フォーカス 005▶ 不動産の遺産分割
[ 質問 ]
父が亡くなり、相続の手続きを進めることになりました。
遺産のほとんどは父が住んでいた自宅の土地と建物で、預貯金や株などの金融資産は不動産に比べると少ししかありません。
相続人は子ども2人ですが、簡単に分けられない不動産が主な財産なので、どのように遺産を分ければよいのか悩んでいます。
このような場合、どのような分割方法があるのか、また注意すべき点がありましたらそれについても教えてください。
[ 回答 ]
ご実家などの不動産が相続財産の大部分を占めていて、金融資産が少ないご相続の相談は、非常によくあるご相談内容になります。
相続人が2人いらっしゃる場合、不動産という「分けにくい資産」をどう分けるのかが最大のポイントになります。
このページでは、不動産が相続財産の中心となる場合の、「代表的な4つの遺産分割方法と注意点」について詳しく解説します。
自宅の不動産が主な相続財産で、相続人が複数いらっしゃる方は、ぜひご一読いただき、ご自身の遺産分割の参考にしていただければと思います。
不動産中心の相続で考えられる代表的な遺産分割方法 4つ
(1)現物分割…不動産や預貯金など、財産をそのままの形で分け合う方法

例:長男が不動産を相続し、長女が金融資産を相続する
▶メリット
●分割の内容がわかりやすい
●現物資産をそのまま活用できる(住み続ける、運用など)
▶デメリット
●不動産と金融資産の価値差が大きい場合、不公平感が生じやすい
●不動産などは分けにくい場合がある
(2)代償分割…一人の相続人が単独で不動産を取得し、その代わりに他の相続人へ代償金(現金など)を支払う方法
例:長男が家を相続し、長女に代償金2,000万円を支払う
▶メリット
●不動産を手放すことなく、そのまま活用できる。
▶デメリット
●代償金を支払う側に、資金力が必要
●支払方法・時期をめぐってトラブルになることも
この方法は、実際によく使われる方法ですが、代償金を支払う側に十分な資金があることが前提となります。
(3)換価分割…不動産を売却して、売却代金を相続人で分け合う方法
例)長男が不動産を代表して相続して売却する。その売却代金から経費等を除いた金額を長女と二人で分ける。
「どうしても公平に分けられない」「自宅不動産に誰も住む予定がない」といった場合に検討されます。
▶メリット
●お金で分けるため、公平性が高い
●分割しにくい不動産にも対応が可能
▶デメリット
●売却の手間と費用がかかる(仲介手数料・譲渡所得税など)
●売却益が出た場合、確定申告(所得税)が相続人2人とも必要になる
●売却までに時間がかかることや、市場価格によっては思ったほどの金額にならないリスクもあるため、売却するかどうかの慎重な判断が必要
自宅不動産に相続人が住み続けたい場合には、適さない選択肢となります。
(4)共有分割…複数の相続人が1つの不動産を共有で相続する方法
例:ひとまず兄妹でそれぞれ2分の1ずつ共有して相続する
▶メリット
●不動産をそのまま維持できる
●遺産分割が難しい場合の短期的な対応としては有効
▶デメリット
●長期的には、不動産の売却や利用方法などで意見が合わずトラブルを招きやすい
●売却・建て替え・賃貸などの際に、共有者全員の合意が必要になるため、柔軟な活用が難しくなる
●共有者の1人が死亡すると、さらに相続人が増えて複雑になる
将来的なトラブルを避けるためには、早めに共有状態を解消することが望ましい。
相続税への影響と注意点
たとえば長男が家を相続し、その代わりに長女に代償金を支払う場合、
実際の相続税の計算では、
長男は「不動産 - 支払った代償金」に対して相続税が課税されます。
長女は「もらった代償金」に対して相続税が課税されます。
そのため、遺産分割方法や遺産分割協議書の書き方により、相続税の額やその他の税金に影響を与える点にも留意が必要です。
また、相続税の申告・納税期限は相続開始から10ヶ月以内です。
納税は原則「現金一括納付」となるため、現金資産が少ない場合には、相続税の納税に支障が出ないよう、あらかじめ考えておく必要があります。
金融資産が少ない場合には、相続税の支払いに困るケースも出てきます。
このような場合には、
●不動産の一部を売却する
●物納(不動産で納税)
●延納(分割払い)
などの方法も検討できますが、いずれも条件や手続きがあり、認められない場合もあります。
単に「どう分けるか」ではなく、「誰が何を取得し、税金や資金をどう負担するか」まで考えることが大切です。
遺産分割協議の進め方
遺言書がない場合、遺産の分割方法は相続人全員の合意によって決定されます。
遺産分割がまとまったら、その内容を「遺産分割協議書」として書面に残し、相続人全員が署名・押印します。
遺産分割協議書は、
●不動産の名義変更
●預貯金や証券の解約
●相続税申告時の添付書類
などに必要となる法的な書類です。
遺産分割協議書の作成に関する詳しい解説は、こちらの記事をご参照ください。
「遺産分割協議とは?注意点や遺産分割協議書作成時のポイントを解説」ページ
不動産を複数の相続人で分ける際の検討の流れ
不動産を複数の相続人で相続する場合、「分割方法」を調べることはあっても、 実際の分割協議で“何を意識して、どこまで話し合っておくべきか”は見落とされがちです。
ここからは不動産を複数の相続人で分ける際の検討の流れを確認していきます。
1)「その不動産が現在どう使われているか」「今後誰か使う希望があるのか」
まず最初に確認すべきは、不動産の現況確認です。
●相続人の1人が住み続けているor住む予定がある
●自宅の一部を賃貸物件として貸し出している(家賃収入がある)
●空き家になってしまったので将来的に売却予定 など
不動産を使う予定がある相続人がいる場合は、その相続人の希望を尊重する一方で、他の相続人との公平性のバランスをどう取るかが鍵となります。
2)不動産の評価額を全員で明確にしておく
分割協議を円滑に進めるには、まず不動産の「価値について共通認識を持つことが非常に重要です。
●固定資産税評価額や路線価はあくまで税務上の価値
●時価は、売却可能性を含めた「市場価値」
●複数の評価方法で価値を算出し、相続人全員が納得できる「参考値」を選ぶ
不動産の価値に対する認識のズレは、分割協議の長期化の原因になることもあります。
3)共有名義にするかどうかを慎重に判断する
不動産を相続人で「共有」にするケースもありますが、将来のリスクがあるため、共有は“暫定策”として捉えるべきです。
●将来の売却や賃貸、建替えに全員の同意が必要になる
●相続を繰り返すと権利関係が複雑になり、調整が困難になる
●自分の持分だけを売却することはできるが、反対に第三者が所有者に入ってくる可能性もある
などのリスクが考えられます。
また、共有や賃貸活用、当面の保有を選んだ場合には、以下のようなランニングコストがかかります。
●固定資産税・都市計画税
●修繕費・管理費(マンションの場合)
●雑草や老朽化などの管理手間
●費用(空き家の場合)
「誰がいくら負担するか」「実務上の管理責任は誰が持つか」を協議書や別紙で明確にしておくことで、後々のトラブル防止につながります。
そして、将来的な売却・相続に備えた取り決めをしておくことも重要です。
現時点では共有分割でも、将来的にその不動産をどうするのかという視点も必要です。
●今後売却する場合、どのように決めるか(事前の合意形成)
●将来、相続人が亡くなった場合の承継ルール(共有持分の引継ぎ)
●「共有契約書」や「管理合意書」を作成し、取り決めを書面に残しておくこともいいかもしれません。
繰り返しになりますが、不動産は可能な限り単独所有または代償分割等で整理し、直ちに売却する予定がない場合には共有状態を避ける方向で協議を進めるのが望ましいです。
法務局ホームページ 相続における「登記申請書の様式及び記載例」のページへ
最後に…
不動産中心の相続では、その後の利用や納税資金、将来の相続まで見据えた話し合いが重要です。
そのためには早い段階で税理士など専門家と連携し、相続人全員が納得できる形で分割することが望まれます。
府中相続税サポートセンターには、相続税の申告を数多く手がけている「相続に強い税理士」が在籍しています。 「具体的にどう分ければいいの?」「相続税はいくら?」といったご相談も、どうぞお気軽にご連絡ください。

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